フルメタル・パニック!TSR第7話「とりのこされて」
今回のポイントは「表情」です。宗介、かなめ、それぞれの「顔の表情」「動きの表情」そこが見所です。あと、恭子ですね。恭子の表情には執念を感じましたね!
そんなわけで、「フルメタル・パニック!TSR」第7話「とりのこされて」の感想でございます。
今回、米田光良さんが作画監督なのですが、米田さんは「動きの質」にその能力を発揮するタイプかな、と僕なりに思っていましたが、今回はアップの表情などが非常に良かったですね。
特に前半の宗介のアップなどは女性作画スタッフが描いたのでしょうか?原作の挿絵を描いている四季さんのニュアンスに近かった気がしたんですけども。だとしたら、そのスタッフワークは非常に優れているように感じます。仕事の分担が上手いんだろうなぁと見ていて思いました。
その仕事の分担ということでいうと。
最初に見所は「表情」と言っておいて何なんですが、スタッフワーク、分担というテーマでちょっと進めてみたいと思います。
今回の脚本は武本さんでした。
脚本をここまで担当したのは、賀東さん、武本さん、志茂さん、山本さんの四人です。そこに絵コンテや演出家、作画監督の配置などが絡んでくるわけですが、見ている印象ではそれぞれのスタッフの個性、能力を見極めて担当回を分担しているのではないだろうか、と感じます。
大まかな分担としては「軍事アクション要素」の強い回は基本的に賀東さんが脚本を担当し、特にアクションが際立つ回の絵コンテ演出は三好一郎さん(第4話と次回の担当ですね)が担当し、「切ない恋愛要素」の強い回は武本さん、山本さんが脚本や絵コンテ演出を担当するという、そういう形になっているのではないでしょうか。志茂さんは今のところ第5話だけですが、ドタバタ要素の回担当ということでしょうか。まぁ、一回だけではちょっと判断しかねますが。
で、作画監督の配置もアクションが強い回は米田さんや門脇さんが担当し、恋愛要素が強い回は池田晶子さん、池田和美さんが担当する。
そんな配置かなぁと。
その意味では、今回米田さんだったのはレイスの不気味さ、ハードボイルドテイストを出すためと、宗介が部屋の片付けをする硬質な演技描写のため、そして恭子のためだったのでは、と。(どうも、米田さんは恭子がめっちゃ好きっぽいですから)
だけど、今回キャラクターの表情、特にアップを見ていると、米田さんの「きちっとした」感じよりももっと柔らかい印象があったんですね。だから、そこに女性作画スタッフの力があったのかなぁ、と思ったんです。
こういったスタッフ配置は非常に上手く機能しているように思います。
それぞれの持ち味を存分に発揮できるように、物語の特色を理解した上で非常に理知的に無駄なく配置されているわけです。スタッフの能力に対する理解度といい、優れたマネージメント能力、高いリーダーシップを持った人間が指揮していることが覗えます。
やっぱり仕上げスタッフ出身の八田プロデューサーの手腕によるものなのでしょうか。
「仕上げ」は、実はアニメスタッフの中でかなり力のある部署だったりもするそうです。一番最後に「ケツを持つ」部署なわけですから、監督がどんなにわがままを言ったとしても、「仕上げ」が首を横に振ったら実現しないというような、そういう影番的なものだったりもするようです。
何はともあれ、全体観が養われる部署ではあるのでしょう。
その全体観から、スタッフそれぞれが能力を発揮できるように配置しているのでしょうね。しかも原作者の賀東氏を「一スタッフ」として機能させる手腕などは、よほどのリーダーシップですよね。(勿論、賀東氏の原作者としてのエゴを捨てるという高いプロ意識も見逃せません)
こういう観点でこの作品を見ると、目的を持ったグループ、企業、チームなどが、その目的を達成するためにスタッフをどうマネージしていけばいいか、を学習していくことができるように思います。
確かに、フルメタル・パニック!TSRはクオリティが高い。
しかし、だからといってこの作品が他の作品よりも予算や時間が多く確保されているということでもないでしょう。おそらくは常識的なアニメーション作品製作費用と大差はないと思います。
クオリティの高さは、そこを目指し、そのためにロジカルに無駄なくスタッフの能力を配置する「優れたマネージメント」を抜きにしては達成できないと思うのです。
そういう意味でも、非常に多くの学習機会を与えてくれる作品であると、改めて評価することができます。
本当に、この作品のリーダーに、ものすごく興味が沸きます。どういう人物なのか。どういう考えを持っているのか。どういうマネージメントのスキルを持っているのか…。取材したくなりますね。インタビューとかしたいなぁ。
さて、この「スタッフ配置」の観点から見ると、今回初めて名前を見た絵コンテ、演出の「吉岡忍」さんという方の配置が今回の話においては重要だったのかもしれません。
この方の経歴は分かりませんが、元々作画スタッフのようですね。おそらく、今回の作画にも入っていると思います。この人が女性なのか男性なのか、名前だけではちょっと判断できませんが。女性なのかなぁとも思います。
後半のかなめが狙われていることに怯える様子の丁寧な描写などからすると、女性な気がしますし、もしかしてストーカー被害経験とかがあったりして。もしそうだったらすごいスタッフ配置だよなぁって。まぁ、それだけで演出に配置したりはしないでしょうけども。
でも、この回を吉岡さんに振ったことは、吉岡さんの能力を見込んで、ということでしょうから。そこは「丁寧な表情描写」に現れている部分なんでしょうね。
動きの表情、演技ということでいうと、今回のかなめは特に素晴らしかったですね。
前半の、宗介と会えることを楽しみにしている様子もそうだし、中盤のちょっと寂しげにして、わざと明るい話題を恭子に持ちかけるところもそうだし。そして何より、ユイランとすれ違ってから一転して恐怖に追い詰められる様子。今回、かなめの演技は秀逸でした。
特に恭子と別れてからは「独り舞台」ですよ。一人で芝居をしなければならないわけです。
恐怖に苛まれながら、必死にどうするべきかを考え、なんとかして宗介と連絡を取る方法を見つけようとする。見つけたら、即行動に移し、なんとか状況を打開しようと宗介のマンションに走る。
しかし、宗介の部屋には装備などは何も無く、もぬけの殻となっている。
そこで、追い詰められていることとは全く別の、より大きなショックを受けるわけです。
この間、画面にはかなめ一人だけしか映らないわけです。お笑いテレビも映りますが、それは逆にかなめの孤独感や焦燥感を際立たせるものになる。テレビを消せば、やはりかなめ一人。
ここの演出、演技もまた大変素晴らしいものがありました。
追い詰められた中、前回彼女が口にした「宗介だけは信じている」というその通りの行動を彼女は取ります。見ているこっちは、もう宗介がいないことを知っているのですが、彼女はそれを知りません。
その「知らない」こと、「叶わないのに信じて助けを求める」ことが、もの凄く切ないし、哀れに見え、見ているこっちはどんどん胸が締めつけられます。
そして、宗介が自分の世界から突然いなくなってしまったことを知り、愕然とするところでそれが結実し、かなめの心を思いやり、思わず涙が滲んでしまうのですよ。
そのラストシーンの演技は、本当に素晴らしかった…。
そして、その演技をつけたのが、今回配置された吉岡忍さんだったということなのでしょう。
非常に丁寧でいい仕事でした。
勿論、雪野五月さんの演技も前回同様素晴らしかった。
かなめはヒロインでありながらちょっと「がさつ」な表現が多いわけですが、今回のかなめは「女」でしたねぇ…。前回も女だったわけですが、今回はまた違った「女」。なんというか…。そう、あれだ!「男ができた女」っていう、そういうちょっと色気出た感じ。だから、前半で変に頬を染めたりとかそういうのが無い、淡々と機嫌が良い感じとか、上手かったなぁと思いますね。
その演技を引き出した名脇役の恭子の芝居も見逃せないわけですが。恭子、可愛かったですねぇ…。
次回は賀東さん脚本で三好さん絵コンテですね。クルーゾーも登場するし、アクションしまくりになることでしょう!楽しみですね。
でも…。9月14日までお預けかぁ…。
はぁ…。「とりのこされ」たのはかなめだけでなく、続きを期待して待っている視聴者だったっていう、そういうオチですかね☆
そうそう。次回の放送時間は0時10分なので、皆様お間違えなく!!
さて。スタッフ配置をテーマにしたわけですが、そこに「演技」というテーマが混在していますね。これは、わざとなんですが、BSで見た富野監督のインタビューに触発された部分が大きいです。アニメーションや漫画における「演技」というものについて、富野監督のインタビューをきっかけにここ数日とても考えています。このことについてはまた改めてコラムとして書きたいと思います。
それでは、また!!
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コメント
毎度お世話様です!ようやく自分の記事を書き上げ、やっと今日になってお邪魔させて頂きました。京都アニメーションサイドの裏側を考察した文章、素晴らしいですね。唸りました。読んだだけの私も、一回りも二回りも賢くなったような気が致します(笑)。これからも、ひと味違った切り口のレビュー、期待してます。
> はぁ…。「とりのこされ」たのはかなめだけでなく、続きを期待して待っている視聴者だったっていう、そういうオチですかね☆
あう!自分が考えてたツカミが、45時間近くも前にガイシュツだったとわ!(泣)
投稿: てりぃ | 2005年8月27日 (土) 11:35
てりぃさん。いつもお世話になります。コメント&TBありがとうございます。
> ひと味違った切り口のレビュー
それしか書けません。(笑)どうも僕は「スタッフ萌え」が強いようです。これはこれで変○っぽいかも…。
で、萌えた挙句、分析(というか、基本的に憶測)が長くって、長文になってすんません。(^-^;
でも、こういった文章でも楽しんでいただけて嬉しいです!!
> あう!自分が考えてたツカミが、45時間近くも前にガイシュツだったとわ!(泣)
あははは。僕も見に行ってびっくりしました。「共振」かも!!(笑)
「領域(スフィア)」を通して「共有」したネタってことで☆
投稿: だんち | 2005年8月27日 (土) 14:44
ニュータイ(ry
いや、
「囁きあってる者達」・・・(゜д゜;)
投稿: ごす | 2005年8月27日 (土) 21:44
>ごすさん
コメントありがとうです。(⌒▽⌒)
≫ 「囁きあってる者達」
寒い国のスパイに狙われちゃう!?
双子になら狙われたい♪
投稿: だんち | 2005年8月27日 (土) 23:58