名演かなめ!ブラボー!!フルメタル・パニック!TSR第9話「彼女の問題」
良質の映画を毎週30分見ているのだということを、ここまでくると自覚せざるを得ません。
この「フルメタル・パニックTSR」は本当に素晴らしい作品です!
ではでは、感想です!テーマをどこに置こう。今回はやはりかなめの熱演の印象から、「演技」ということになるでしょうか。
今回のお話での主人公はかなめ。
彼女が狙われていることに対して、自分で何とかしようと懸命にあがきにあがくわけですが。そこに様々な表情を見せてくれます。
不安。恐怖。強い意思。女らしさ。脆さ。そして力強さ。
いきなりラストの話をしますが。ラスト前、かなめがうずくまり、必死に口を拭い、宗介の名を呼び泣くところを見ていて「これがラストシーンかな」と思っていました。
ところが、彼女は再び立ち上がり、ぶっ倒れているレイスに向かって「もう少し悪あがきしたらどう?私はするわよ」と言うわけですね。
そのシーンを見て、「おお!!」と思いました。
このシーンに、今回のお話の見所が集約されているわけですね。
かなめは、冒頭、学校で宗介の退学を知らされ誰も守ってくれていないことをいよいよ自覚し。そこから悪あがきをしまくるわけです。
二階から落ちて体を痛めたり、暗殺者から必死に逃げ回り、挙句罠を張り反撃をする。レナード相手に強気に渡り合い、交渉してレイスの身柄を確保する。
でも、レナードが本気でかなめをどうこうしようと思えばどうとでもできたわけですよね。単に、レナードの目的がユイランの始末だったということで、目こぼしてもらっただけ。悪あがきがどれ程効果があったのかは怪しいもので、実際かなめは唇を奪われた屈辱などと一緒にどうしよもない敗北感にも苛まれて泣いたように見えました。
なんだけど。
だけど、かなめは再び立ち上がり「これからも悪あがきをする」とボロボロのまま宣言するわけです。
「諦めたら、そこで試合終了ですよ」という、丸いオヤジの言葉が聞こえてきそうです。
どんな絶望的な状況でも決して諦めない。
どんなに敵が強大であっても、どんなに状況が不利であっても、知恵を絞って行動を続けて、最後まで諦めない。その力強さ。
倒れて動けないレイス、ボロボロで半裸に近いかなめ。雨に打たれる夜のビルの屋上。
力強さというよりは物悲しさが漂う映像の中で、かなめの負けまいとする表情と言葉と、声。
素晴らしいラストシーン!素晴らしい演技でした!!
このラストの演技を導いたのは、やはり直前のうずくまって泣くところの演技ですよね。
ここが大根だったら、ラストは全然生きないわけですよ。あの「問題ないって言ってよ…」のところの雪野五月さんの演技は本当に素晴らしかった。かなめの持つ弱さ、本当は宗介を心から求めている少女の心を完璧に演じていましたね!
そしてまた。
このラスト前の迫真の演技を導き出すのが、それまでの必死の悪あがきの数々の場面でのかなめの力強さの演技なわけですね。必死に歯を食いしばって戦っている様子を表現し演じてきたからこそ、唯一かなめが弱音を吐くところがものすごく生きる。本当は、「やだよ…こんなのやだよ」っていう、そっちがずっと本音だったわけですよね。それが伝わって、見ているこっちは「可哀想に…かなめ。そりゃ辛いよね…」と思うわけですね。ところが!!最後に彼女は再び立ち上がる!!
物語の楽しみの本質の一つに「疑似体験」というものがあるのだとすれば。
これは本当に素晴らしい疑似体験です。
見ていて「そうだ!俺も諦めないぜ!!」という気持ちにさせられます。
その疑似体験を生むのは、演技なわけですね。
脚本、絵コンテ、演出、作画、着色(色のセレクトも重要な演技の要素ですね)とあって、そしてアフレコ。その全てが高質に融合し合って、「名女優千鳥かなめ」の名演を引き出したということなのでしょう。
明確なビジョンを持っているからこそできることなのでしょう。その「明確なビジョン」というもの。「なんとなく」ではやらない、ということ。いい仕事をするための本質を見せられているように思います。
その目指すところ、ビジョンというものを感じるところに、今回改めて自覚させられたわけです。
良質の映画を毎週30分見ているのだということを。
ところで…。ユイラン、ぽっくりいっちゃいましたね。さくっと。
ありゃりゃ!!って、ちょっとびっくりしました。ウイスパードは強いんですねぇ…。その辺りシリーズを見終わったら小説を改めて読もうと思っているのですが。(小説では双子は出ないということですが)
それはともかく!!アラストルに絞め殺されるユイラン!!!
思わず(以下とても不謹慎かつ不適切なので省略)
レナードも、なんだかすっげぇ変態そうだし。あいつきっとユイランの死体を持って帰って(以下やはりとても不謹慎かつ不適切なので省略)
不謹慎な話はともかく。
次回も、素晴らしい疑似体験をきっと味わえることでしょうね。楽しみです!!
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