通り過ぎる切ない女…フルメタル・パニック!TSR第11話「彼の問題」
フルメタル・パニック!TSR第11話の感想です!!
今回も素晴らしい演技を楽しみました。脇役なのに、娼婦の演技素晴らしかったですね!
後、やはり「音の演技」も本当に素晴らしかった。それと、今回のテッサの演技もまた非常に素晴らしかったですね!
前回、遣り甲斐を失った宗介は腐ってしまい、そういうことは男子には起こり得るものだと思ったわけですが。今回。そんな腐った男子を蘇らせるものは何なのか。そういったことについて非常に考えさせられました。
今回の感想では、娼婦の演技と腐った男子を蘇らせるものについて語っていきたいと思います。
「腐った男子」宗介は、今回も腐った男子らしい象徴的な行動を見せてくれましたね。
それは、「酒」と「女」
まさに定番なわけですが。腐り方を知らない宗介にとっては、それくらいしか思いつきもしないでしょう。それに、「腐り慣れた」人間だって、やはり酒や女に逃げ込みますから。これはもう「腐りの王道」といっていいわけですね。
とりあえず、酒を一本入手し、行きずりの、かなめに似た娼婦に誘われるまま娼婦の部屋へと転がり込む宗介。
ここから先は、腐ろうと思えばどこまでも転がっていける。そんな入り口にさしかかったわけですね。
そんな宗介に対して「人間関係なんて、寄っかかれるだけ寄っかかって。使えなくなったらポイしちゃえばいい」と言いながら寄り掛かる娼婦。入り口からさらに中へと誘うわけですが。この娼婦の演技が本当に秀逸でした。
声を当てたのは荒川美奈子さんという方で、かなりのベテランさんのようですね。
こう言ってしまうとなんですが…その…人生経験を経た女性が演じることによって、若ぶっていても人生の底をさまよう年増娼婦の物悲しい感じが、ものすごく表現されていたように思います。あの味わいは若い声優さんでは出せないように思います。
台詞ワークやリアクションの部分、トータルでの演技の部分でも、あの娼婦の人生や、宗介と出会った時の状況など、いろいろなものを感じさせてくれて。脇役なのに、どこか忘れられない切なさを物語に与えてくれましたね。
戒厳令下の街から避難しなかったり、男と別れたばかりだったり「仲間なんていたっていつ裏切られるか」と言ってみたり、「思い出しそうになったらヤルの。そして飲むの」と宗介を押し倒したり。
そこから、彼女の状態が見えてくるわけですね。
言ってみれば、宗介と同じ状態。
深く傷つき、悲しんでいる。別れた男のことを「あんなヤツ」という感じで言っていたわけですが、その別れが本当は辛く受け入れ難いものであったのかもしれません。
だから、金で買われた形でありつつも、目の前の男に寄り掛かりたくてどうしようもない。
腐ったもの同士で傷を舐め合うことで、少しでも安息を得たい。
そういう切実なものが、あの娼婦の、あの一連の演技から感じられるように思います。
もし、そこまでのキャラクター設計が無かったとしても。荒川さんの演技はそういったものになっていたと思いますし。いや。やっぱり、ああいう脇役にきちんとベテランをキャスティングするのは、やっぱり狙いあってのことなんでしょうね。
そして。
悲しいことに、宗介は一緒に腐って、傷を舐め合ってはくれないわけです。
それに対して怒り、酒をつき返し「消えな!」と言うところなど、僕はとても切なさを感じました。だって、ああやって宗介を叩き出してしまったら、彼女はまた独りぼっちになってしまうわけですから。
本当に、とても悲しいキャラクターとして描かれていたと思います。
今までの。
かなめの、テッサの、マオの、熱演名演が随所にあったわけですが。
この娼婦の演技も、TSR史上に残る名演であったと、僕は評価します。若い人だと、ちょっと分かりにくいものかもしれませんが。今20代の人とかが、10年20年経ってから改めてこの娼婦の演技を見たら、いろいろと発見があるかもしれませんよね。
さてさて。
今度は宗介の話です。
腐ってしまい、腐ってしまおうと酒と女を前にしたわけですが。結局彼はそこに溺れることができませんでした。
それは、彼にとって「大切な存在」があるから。
そのことで言うと。
娼婦に重なってかなめの声が宗介には聞えるわけですが。そのかなめの演技も非常に良かったですね。娼婦の名演に重なってくるかなめの声が、本当に切なく瑞々しく響いてきて、宗介が踏みとどまるだけの説得力がありました。台詞自体は少ないながらも、宗介に対するかなめの愛情を雪野五月さんは見事に演じていたと思います。
遣り甲斐を失って腐ってしまうことは男子には起こり得ることなわけですが。
では、そこから抜け出すにはどうすればいいのか。
宗介は、まず、かなめのことを思い、踏みとどまりました。
やっぱり。そうですよね。
僕達だって、腐った状態になったとしても大切な存在に対する思いが、腐ったところから抜け出していくきっかけになっていくわけです。
それは、恋人であったり家族であったり友人であったり。
そういう存在に対する思いをきっかけに蘇っていける。
で。そういう話を智華さん(サイドバーの「アル」のメロ友達、「榎戸」の飼い主さんですね)としていたら、智華さんが「そうだよね。亡くなった人だって、そういう存在になっていくよね」と言ったんです。
それを聞いて、「あ!」となりました。
今回伏線が張られて、次回予告で幼い頃の宗介の姿があったわけですが。おそらく彼は次回、過去と向き合うことになるのでしょう。
そこから先のことは、来週の話で、ここであれこれ言うのは野暮なのでしませんが。
でも、「なるほどなぁ。本当に宗介が腐ったところからちゃんと抜け出していくところを描くんだ!!」と改めて思いました。
なんというか。賀東さんもまた、本当にもう腐って腐って腐りまくった時期があるのでしょうね…。
だけど、心に残っているもの。大切な何か。そういったものがあるから、腐り切ることはできない。今回の宗介は、女に溺れることもできず、酒を飲むこともできず。結局、腐った方へは行き切れない。
だけど。現実もやはりそういうものかもしれませんよね。
「いっそ腐ってしまえ」と思ったところで、なかなか本当に腐り切ることはできない。
「遣り甲斐を失ってしまって腐ることが男子にとって起こりうること」であるならば、「でも結局腐り切れないでグダグダしてしまう」というのもまた、ほとんどの男子にあることだと言えるかもしれません。
だってやっぱり。
男の子は、ああいうの、身に覚えあるでしょう?
あの中途半端なグダグダ感。
でも。
いよいよ次回。そしてその次の最終回。
宗介が蘇っていくその過程、そのドラマ、そしてその姿を見ることができるわけです!!
ここはもう。思い切り自己を投影して、感情移入して見ましょう!!
次回予告の幼い宗介を見て、なんだかもうそれだけですごく胸が締め付けられるような思いがしました。
次回もとても楽しみです!!!!
次回は三好一郎さん絵コンテ&演出で門脇聡さんが作画監督ですから、アクションバリバリの回にもなることでしょう!!
しかし。
やはり改めて思います。
大切な存在によって、腐り切らず踏みとどまった宗介に対して、あの娼婦はどうなのだろうか、と。
彼女は、本当に独りぼっちで、大切な存在を持たないのだろうか、と。
通り過ぎるだけの、名も無い脇役に過ぎないわけですが。
とても悲しく、切ない女性でした。
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コメント
あぅ~、この差はなんなのでしょうか…。orz こんな記事でトラックバックしてしまって、申し訳ないです。
確かにあの娼婦、脇役としておくには勿体ないほど存在感を出しておりました。ただ、自分の中ではどうしても「あっち」としての認識しか持てなかったんでしょうね。宗介は辛うじて「こっち」側に踏みとどまっているわけで、そちらに感情移入しようとして失敗した、何かそんな感じです、私。
それはそうと、ドラゴンマガジンの最新特集で思いっきりネタバレを読んでしまった私です。orz 甘かった、甘かったですヨ。
投稿: てりぃ | 2005年10月 6日 (木) 22:57
>てりぃさん
コメント&TBありがとうございます!
あやまらないで下さいよぉ。(^-^;今後ともよろしくお願いいたします!
僕はああいう「底辺にいてどこか助けを求めている」キャラクター好きなんですよね。
すぐ「切ねぇなぁ…」ってなっちゃって。
そうそう。
そちらのコメントで書いたことの続きになるんですが(レスでも考察を続けて…すいません…)。
宗介が酒を持って歩いていたことが「問題から目を逸らす」ことを象徴していたとしたら、酒を娼婦のところに置いて出ようとした時に、「忘れ物だ」と渡されるところも象徴的ですよね。「自分の問題は自分が持っていけ。そんな物人のところに置いていくな」というような。
やはり、酒をずーっと持ち歩いていたところは印象的ですよね。
って言いながら、全然記事には書いていないわけですが…。後で気付いたもので。
≫ それはそうと、ドラゴンマガジンの最新特集で思いっきりネタバレを読んでしまった私です。orz 甘かった、甘かったですヨ。
あははは!何を見たんですか!!!気になるなぁ。情報をシャットアウトするのもなかなか難しいですよね。
でも、残り2話、楽しみましょうね!!
投稿: だんち | 2005年10月 7日 (金) 16:23
だんちさん、毎度ふもっふでございます、てりぃです。
ようやく一通りの巡回をようやく終えましたが、あの娼婦への情の入れ方は間違いなくだんちさんが一番でございましょう。これだけ想ってもらえれば、彼女もきっと幸せなのではないかなと。
「忘れ物」の件、気が付かれましたか。くぅ~、あちらでコメントにいただいた内容を見て唸った時に、そのことに思い至ったので、お返しコメントはその線で書かせて頂こうかと思っておりましたのに…(^-^;。
それだけでは悔しいので、私もブログ記事で書き損ねたネタを。「彼女の問題」と「彼の問題」が対になっていることは誰でも気付く話ですが、そのクライマックスでお互いの声が「気付きのきっかけ」となっていることに気付かれましたでしょうか。今回、宗介はかなめの声を聞いて自発的な行動=「拒絶」を示すのですが、「彼女の問題」中においても、かなめの迷いを断ち切ったのは宗介の声でした。描写の方向性にかなりの違いがあった2つの「問題」でしたが、その根底にはお互いを対照して描こうという意志が貫かれていたのでしょうね。
>あははは!何を見たんですか!!!
うっかりとScene13のあらすじ(導入文)を読んじゃいましてねぇ、Scene12で宗介がナニと直面するのか、わかっちゃったんですよォ…。ちくしょー!!
長々と失礼致しました。残り2話、かぶりついてみて参りましょー。
投稿: てりぃ | 2005年10月 7日 (金) 21:23
そんなこんなで、時空を越えてやってまいりました、結城レイです、宜しくお願いします♪
アニメは見てないけれど、プログを読むだけでこちらにまでその感動が伝わってくるような素晴らしい感想・・・ここまで書かせる京都アニメーション、ぐっじょぶ!!
まぁ、京アニにここまで書かせるだけの作品であるのだし、出来ればアニメを見終わったらば原作小説の方も読んでみませう♪
投稿: 結城レイ | 2005年10月 7日 (金) 21:55
>てりぃさん
ふもふも。ふもるる!こんにちは!
≫あの娼婦への情の入れ方は間違いなくだんちさんが一番でございましょう。これだけ想ってもらえれば、彼女もきっと幸せなのではないかなと。
ありがとうございます!
あれぇ…。人気ないですね娼婦。ってそりゃそうか。(^-^;
でも、非常にいい演技だったのは間違いないと思うので、後ででも評価が上がってくると嬉しいなぁと思いますです。
≫ 「忘れ物」の件、気が付かれましたか。くぅ~、あちらでコメントにいただいた内容を見て唸った時に、そのことに思い至ったので、お返しコメントはその線で書かせて頂こうかと思っておりましたのに…(^-^;。
あぁ!すいません。そちらのコメントで中途半端なところで終わってしまって…。後になって気付いてこっちのレスで補足するという、乱暴な時空の越えかたをしてしまいましたね。しかも、またそちらのコメントで続けてるし。(^-^;
≫ 今回、宗介はかなめの声を聞いて自発的な行動=「拒絶」を示すのですが、「彼女の問題」中においても、かなめの迷いを断ち切ったのは宗介の声でした。描写の方向性にかなりの違いがあった2つの「問題」でしたが、その根底にはお互いを対照して描こうという意志が貫かれていたのでしょうね。
おお!なるほど。その点は自然に見てしまっていて気付いていませんでした。
確かに、見事に対になっている表現ですね。その描写によって、二人が離れていてもお互いに想いを寄せている様子が感じられるわけですね!
なんだか、その指摘を拝見すると、第6話の散髪のシーンとかまた見たくなります。あの幸せな一時は宗介やかなめでなくても忘れ難いものですよね…。
あ。考察脳が動き始めた…。
あれですね。
その指摘から「対」であることを発展させて考えると。
かなめには暗殺者という命を狙う存在が表れて、明らかな危機があったわけですが。宗介には娼婦の存在がそういう「宗介にとって命、又は命に匹敵する何かを奪おうとする存在」だったのかもしれませんね。
…!あ!!
今、ちょっと閃いたことが…。深読みしすぎかなぁ…。先を見ないと分からないことなんですが…。
あの娼婦がいたところが「避難しなくてはならない場所」だったっていうのが…伏線には、なってないかなぁ…。もしそうだった場合あの娼婦は後で…おぉ…(←感情移入しすぎ)
≫ うっかりとScene13のあらすじ(導入文)を読んじゃいましてねぇ、Scene12で宗介がナニと直面するのか、わかっちゃったんですよォ…。ちくしょー!!
あぁ…。それは。やっちまいましたね。あと数日のうちに頑張って記憶を消して下さい!でも、多少のネタバレではびくともしない物語を見せてくれることは間違いないですよ。楽しみましょうね!
>結城レイさん
時空を越えていらっしゃいませ!こちらこそよろしくお願いいたします。
感動が伝わる感想になっていますか?嬉しいです!
京都アニメーション、ぐっじょぶですねぇ。素晴らしいです。彼らの仕事を少しずつフォローしている最中です。
結城レイさんは原作ファンの方なんですね。機会があればTSRも是非ご覧になってみて下さい。
原作とは違ったモードで視聴する必要は、やっぱりあるとは思いますけれども。
僕は原作は「終わるデイ・バイ・デイ」のみ読んでいない、という変な読者です。(笑)
勿論、放送が終わり次第上下巻購入して一気読みする予定でいます。
今のところ、長編では「戦う~」と「踊る~」が好きですが、「終わる~」も好きな作品になりそうで楽しみです!
また遊びに来て下さいね!
*「時空を超える」とは
ブログを越えてコメントで同一の話題のやりとりをすることをそう指しています。
「どういう話になっているんだ?」と思われた方はてりぃさんのブログへGO!!
投稿: だんち | 2005年10月 8日 (土) 14:28
だんちさんは『オン・マイ・オウン』は見ているご様子・・・
なので質問です。
P189のカナメさんの顔・・・あれ見てどう思います?
って、感想を聞いたら思いっきりネタバレっぽくなりそうだから感想かけないかもしれませんが・・・(汗
投稿: 結城 レイ | 2005年10月 9日 (日) 14:58
> P189のカナメさんの顔・・・あれ見てどう思います?
てりぃさんのところで書いてらした「印象に残っている」というP139のイラストのことですね?
確かに、すごく答えにくいですね。(笑)
イラストも含めて、ここのシーンはなんともあれですよね。
その前の一連のことがあっての、あのシーンですからね。
かなめは横顔ですが、その横顔が綺麗なのがまた、すごく胸を打ちますよね。
でも、僕はそれよりも、213Pの恭子のイラストにかなりヤラれました!!
はぁはぁしてしまって…。自分のヤバさ加減を再認識してしまいました☆
投稿: だんち | 2005年10月 9日 (日) 19:19
ぃゃ、あのシーンのカナメの美しさもそうなのですが、私が言いたいのは彼女の瞳・・・前後の会話とあいまって、まるで・・・あぁっ!!この先を言いたいのに、言いたいのに~~~っ!!!
もちろん、恭子のイラストも良いですよね♪美しいというかなんと言うか、ほっとけない小動物のような可愛らしさというか・・・?w
投稿: 結城 レイ | 2005年10月10日 (月) 01:28
>私が言いたいのは彼女の瞳・・・前後の会話とあいまって、まるで・・・あぁっ!
うん。分かりますよ。(笑)
でも、あのイラストのかなめの瞳については一番言及できないことですよね。ネタ的に。
ぐっと堪えてください!
アニメが終わったら小説のレビューもしようかなぁ。
そうしたら熱く語りましょう!って、「戦う~」から始まるのでかなり先になりますが。(笑)
>もちろん、恭子のイラストも良いですよね♪美しいというかなんと言うか、ほっとけない小動物のような可愛らしさというか・・・?w
いやその…。どちらかと言うと、もっとその…サディスティックな気持ちで…。人として、説明してはいけないような、そんな衝動に襲われたイラストでした♪
投稿: だんち | 2005年10月10日 (月) 12:36