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2006年9月 9日 (土)

作業過程2

 おはようございます。だんちです。
 「作業過程。」でご紹介したレディースコミック「微熱」用の原稿を、昨日完成させて編集部に発送いたしました。
 終了間際に隙を見て撮影した作業過程写真をアップでございます。前回の過程の写真と合わせてご覧いただけると、ネームから始まったものが「こうなった」んだ、ということが分かるかと思います。
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Katei3
トーン貼り作業中の一コマ。ばりばりエッチシーンのページですね…。
 
 
 この原稿が掲載される時期は未定ですが、決まり次第お知らせいたします。是非完成して印刷された状態も見ていただければ、と思います。

 さて、この原稿を仕上げて、その過程の中でも様々な反省点を発見することができました。
 仕上げていて、トーンを貼っていると、「白い部分」をどんどん埋めていきたくなってしまうことがあります。
 それは、「白いところを残して手を抜いているように思われたくない」という心理がどうしても働いてしまうからであるように感じます。
 でも、実際にどんどん白いところを埋めていくと、メリハリの無い画面が出来上がってしまうことがあります。今回も「あ。しまった、ここ貼らなくて良かった」と思うことが何度かありました。
 以前も印刷されたものを見た時に、「あれ…頑張って貼ったんだけど、なんだか雑誌の中で埋もれてるなぁ…」と思ったことがありました。それは、バランスとして白い部分が少なくなったことで、色合いが単調になってしまったということが大きかったように思います。
 今回は、作業していて気づけたので、少し進歩したとは言えるのかもしれません。

 この、「白いところを埋めようとしてしまう」習性は、おそらく僕だけでなく、漫画を描く多くの人が抱えているものであるようにも思います。
 これは「相対」の問題で、その作品が何を表現しているかというところとは別に、「損をしたと思われるものにしたくない」という心理なのではないか、と思えます。
 「線が多くて、ベタが多くて、背景が描きこまれていて、トーンがいっぱい貼ってある」
 という原稿が「立派な原稿である」という、相対的な評価基準が頭にある場合に、そうなってしまうのかもしれません。

 それに対して、「相対的な評価を満足させる原稿」とは違った「絶対」の原稿とはどういうものか、と考えてみると。
 「伝えるべきことを伝えることができる原稿」ということになるのだと思います。
 そのことも、今回経験としてありました。
 手伝ってくれた配偶者が発見したことなのですが、それはこういうものです。

 あるコマにどういうトーンを貼るかを考えていた配偶者氏。イメージしてみたトーンを選んで原稿に合わせてみる。ところが、そのトーンがコマの大きさに対して足りない。そこで、ある分だけを先行して貼ってみる。すると、その貼ったトーンだけでそのコマのキャラクターの心情が明確に表現されていることを発見。それ以上貼ることが無意味であることをそのコマが告げていることを知る。

 足りないからこそ、ピンポイントで貼ることになったわけですが、それにより結果として「キャラクターの心情を表現するためには、貼るべきトーンを貼るべき箇所に貼ればよい」という発見をしたわけです。

 これは、「白いところを埋める」というトーンワークとは全く違ったもので、「表現すべきことのために貼る」というものです。
 つまり、「絶対」の仕上げ作業ということになります。

 この発見を聞いて、重要なことに気づかされたのだと思いました。
 トーンワークをする時に、ページごとにバラバラに貼っていてはいけないんですね。作業としてはそうなっても、トーンの選択は物語全体の情感の動きに合わせてなされなければいけない。
 「絶対」の表現のためにトーンを貼る、という認識が欠けていたために、僕は「白いところを埋める」という相対的な作業をしていたわけです。
 相対的に白いところを埋めるだけのトーンワークでは、メリハリのない画面になって当たり前ということなのでしょうね。
 絶対的な表現のためにトーンを貼れれば、それは必要なバランスを生んで、より完成された画面になっていくのかもしれません。
 大変良い学習をしたように思います。今後の原稿の仕上げに大いに生かしていきたいと思っております。

 しかし、それにしても…。今までは「なんとなく」でトーンを貼っていたんだなぁということを改めて思い知らされます。トーンで心情を表現する、ということは当然意識はしてはいたけれども。でも、よくよく考えてみると「心情に外れないトーンを選んでスペースを埋める」という判断で貼っていたように思えます。
 今回のことは、「仕上げ」という作業の奥深さに触れたということなのか、それとも「漫画作業において重要な演出ロジック、技術ロジックが確立、共有されていない」という現実を改めて思い知ったということなのか。

 両方。かな。

 まぁ、そういう反省点もあるわけですが。全体的に切れ味のある絵が描けた原稿になっていると思いますので、掲載の暁には是非ご覧になっていただきたいと思います。可愛らしく、かつエロく!楽しい作品になっておりますので。

 ではでは、またです!

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