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2006年9月12日 (火)

「ARIA The NATURAL」第24話を見た。

 こんばんは。だんちです。「ARIA The NATURAL」第24話を見ましたので感想を書きたいと思います。

 灯里という、一人前のウンディーネを目指す少女の成長をドキュメント的な構成で描いてきたこのシリーズですが。いよいよ極まってきましたね。
 過去から繋がってくる現在を生き、そこにあるものを受け止め、未来へと繋げていく。
 その人間としてあるべき自然な姿をここまで楽しく描いてきてくれた作品だったと思います。
 今回は、ペアとシングルの後輩三人が、近い将来一人前になるための、現実的な経験を積むお話だったように思います。

 地味な書類仕事。悪意を持った同僚。
 マンホーム出身の灯里だけでなく、藍華やアリスにとっても、一人前のウンディーネになることはある種理想の自分を実現させることなのでしょう。だけど、そこには理想に見合っただけの現実がある、ということですね。
 それもまた、生きていく上では当然のことで、自然なことなのでしょう。
 ここまで至って、もう灯里がマンホームから来た余所者にはとても見えませんね。
 藍華やアリスと同じ理想を持ち、同じ現実に直面する、「その場の現実を生きる人間」として描かれているように思います。その意味では、今回、主人公でありながら灯里が何か突出することを言うわけでもするわけでもなく、藍華やアリスと同じ立場で描かれていたことに、すごくしっくりくる印象を持ちました。まさにそれもNATURALな、という感じで。

 お話としては、とても地味で起伏の少ないエピソードだったとは思いますが、そういったお話を真正面から見せてきてくれるところに、作品に対する愛情と、視聴者に対して語りかけてくる作り手の姿勢を感じます。
 それはまた、演技の素晴らしさもあってできることなのでしょうね。
 今回も斎藤千和嬢の演技は本当に素晴らしかったですね。皆川純子さんはやはりまたアフレコ時に泣いたことでしょう。実際ちょっと軽く涙声になっていたような気もしますし。

 でも。「NATURAL」ということで思うこととしては。
 頑張っていても、悪意を持つ人は必ずいて、それは現実としてあることなんだけど。見ている僕らが、必ずしも「悪口を言われる側」でばかりあるわけではないよな、とも思います。
 逆に、「悪口を言う側」になってしまっていることも、あるのではないでしょうか。
 やはり、人間だから、つい人のことを悪く言ってしまうことはあるでしょう。
 でも、その先には、今回の藍華のように、悔しさや情けなさで泣く人間がいる、ということも、「NATURAL」なのだと思います。
 悪意は、その悪意を向けた人間を傷つける。そして同時に、その周囲の人達をも傷つける。

 気がつかずに、僕らもそうやって誰かを傷つけているのかもしれない。

 そんなことを、斎藤千和さんの渾身の演技をもって泣く藍華を見ていて思いました。
 勿論、僕も生きてくる中で、僕のために周囲の人が怒ってくれたり泣いてくれたりしたことがありました。また、藍華のように誰かのために怒ったり泣いたりしたこともあります。
 でも、それだけではなく。
 人を傷つけてしまったことも数多くありますし、思い返せば、何故あんなことを言ってしまったのか、何故あんなことをしてしまったのか、ということもまた、数限りなくあります。
 それにより傷ついた人の反応を、目の前で見ることはあまり無いのですが、悪意があったり、配慮が無かったりする言動は、自分が見ていなくても、やはり多くの人を傷つけてしまっていたはずです。
 藍華を見ていて、まず泣いている藍華や悪意の矛先になった晃の方に感情移入したのですが、後になって、それだけではなく、自分が誰かを藍華のように泣かせてしまっていたり、晃のように傷つけてしまったり、していることもあるだろう、と思いました。

 晃が言っていたように、良いことも悪いことも両方受け止められないと、つい人を悪く言ってしまったり、自分にとって都合がいいように周囲を操ろうとしたり、してしまうのかもしれませんね。
 それはつまり「不自然」ということなのでしょう。
 あらゆるものを「自然と」受け止めるためには、強さが必要で。その強さを得た時には、後輩三人は彼女たちの手を守っている手袋を外すことになるのでしょうね。それは、ただ手袋を外すというだけでなく、何ものにも負けず、全てを自然と受け止める柔軟さと強靭さを手に入れるということなのでしょう。

 それはまた、視聴する僕らにとっても同じことで。人のことを悪く言わず、また人から悪く言われることがあったとしても、自分の周りに起こっていることを「NATURAL」に受け止めていくことができる時、自分の心にある手袋を外すことができる、ということなのかもしれません。

 最後、灯里はアイちゃんに「お返事下さい」とメールをしますが、アイちゃんの返答はありません。
 返答すべきなのは。
 僕ら視聴者一人一人、ということなのかもしれませんね。

 灯里がネオ・ヴェネツィアで彼女にとっての現実を生きる姿を見せてくれたことによって、アイちゃんの視聴者の代理的立場は終わったと言えるのでしょう。
 灯里は現実を生きるし、アイちゃんも自分の現実を生きる。
 それはまた、僕ら視聴者も、自分達の現実を生きる、ということなのでしょう。
 理想郷であるかのように見えたアクアやネオ・ヴェネツィアは、そこに生きる人達にとっては現実の世界で、それは今この地球で生きる僕らと同じことなのだと思います。
 物語の中であっても、そこに人を描くのであれば、生きている人間を描くことが自然なこと。
 そして、それを物語のこととして見ながらも、感じ取ったことを自分のこととして受け止めていくことも、また自然なこと。
 それは、物語の持つ、実に当たり前で基本的なことのように思えます。
 だけど、もしかすると、物語を作る側も、物語を受け取る側も、どこかで忘れてしまっていたことなのかもしれない、とも思います。

 このシリーズが見せてくれたことは、「物語」というものの持つ、とても自然な働きを、教えてくれるものだったのかもしれません。
 で、あるならば。
 これからも多くの物語を受け取る僕らの未来に、またこれから多くの物語を作っていく人達の未来に対して、とても大切なことを与えてくれる作品になっているように思います。

 今、この時代、この時期に、この作品は必要だった。

 これから先の未来においても、僕はそう思うのではないだろうか、と感じます。
 その未来の僕は、どんな物語を見て、どんな物語を作っているのだろうか。
 そして、その時の僕は、この作品を思い出してどう思うのか。
 今が未来に繋がっていく中で、自分の未来の心の中に、確実にこの作品は存在し続けることでしょう。

 なんてなことを書きつつも、あと二回あるんですよね。
 未来に繋がっていく現在について。そして人があるべき「NATURAL」な姿について。まだまだ語りかけてくれるのでしょうね。
 何を語って聞かせてくれるのか。
 この物語を、最後まで楽しみたいと思います。

 ではでは、またです!

 参照:「なぜアニメの感想を書くのか。どういったスタンスで書くのか。」
    :「物語り人(ものがたりびと)」であること。…学習機会レポート2
    :「物語作りの基礎。普遍的土台と誇張表現の調和により生まれる適度な感情移入…学習機会レポート」  
    :「『音響監督佐藤順一』の手法に注目してみる」

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コメント

ひとが笑顔を見せるのはどんなときでしょう
心から楽しい・嬉しい・喜びを感じたとき。
それとは逆の感情があっても敢えて笑顔を見せる。
晃が灯里たちに見せた笑顔は後者の方だったのかもしれません。

たとえ自らの努力と実力をもってのし上がったとしても
成功者に対する妬みと根拠のない誹謗中傷。
これはある意味人間の持つ負の部分、もしくは闇の部分と言える
のでしょうか。

晃に対する噂と誹謗中傷。
察するに、髪の長い娘がそれを広げた中心人物なのでしょう。
でもなんの根拠もないものはやがてメッキが剥がれていくもの。
それまでは話に乗っていた女の子たちも次第に離れていく・・・。
そんな様子も描かれていましたね。

それもやむを得ない事としているその姿は私たちの目には
とても強く映りますが、灯里たちに
「不思議なもんだよな・・・嬉しいってことはすぐ慣れて当たり前に
なるのに、嫌なことはたったひとつ残っただけでも
ものすごく重く感じてしまう。
多分、ひとは自分自身で嫌な事を何倍も重くしているんだ・・・」
と呟いているところにどこか彼女の弱さや寂しさを感じてしまいます。

やがて降っていた雨も止み、日が射してきます。
もっと強くならなければと誓いをたてながらも無邪気にはしゃぐ
3人の娘を、晃は暖かい笑顔で窓から見下ろしていますが
「あなたたちもいつかは同じものと闘わなければならない日が
やってくるのよ」と言っているようにも見えました。
彼女たちには乗り越えなければならないハードルはこれからいくつも
登場してくるのでしょう。

だんちさんが毎週感想文を書いておられるので
私は今回初めてこの作品を見ました。
ですから多少的外れ的な部分もあるとは思いますが
今回見た限りでの感想ということをご了承下さい。

投稿: フレア | 2006年9月16日 (土) 00:51

そういえば藍華の声、私はてっきり日高のり子さんかと
思っていました(^^;

投稿: フレア | 2006年9月16日 (土) 01:43

フレアさん。こんばんは^^
僕が感想を書いていることをきっかけに作品を見てくれたというのは、とても嬉しいです!
その上でこうやって書かれるようなことを感じられたということは、作品を好きな者として更に嬉しく喜び倍増でございます^^

>それとは逆の感情があっても敢えて笑顔を見せる。
晃が灯里たちに見せた笑顔は後者の方だったのかもしれません。

そうですね。晃の笑顔、態度はとても印象的でした。
仰られる通り、彼女の本音、寂しさや弱さが感じられ、だからこそ彼女の強さが浮き彫りになるシーンでしたね。

>ですから多少的外れ的な部分もあるとは思いますが
今回見た限りでの感想ということをご了承下さい。

いえいえ。逆に先入観が無い状態で見れて良かったのではないでしょうか。
ご自分が感じられたことをとても素直に言葉にして書かれているように思います。
よい感想でした。
的を外すも当てるも、結局それが心に感じたことそのものなわけですから。そこはどうでもよいところなんだと思います。
それよりも、作品を見て何かを感じるということをこうやって共有できたことが、やはりとにかく嬉しいことだと感じます。
この作品はあと二回で終わってしまいますが、お時間があるようでしたら残りあと二回も作品の視聴体験を共有したいものですね^^

>藍華の声、私はてっきり日高のり子さんかと
思っていました(^^;

あー。泣きの演技の時のうわずった声の時とか似ているのかもしれませんね。斎藤千和さんも素晴らしい演技をされる声優さんですし、この作品の監督である佐藤順一氏は非常に素晴らしい演技を録る方でもあります。声優さんの演技も、注目ですよ!

投稿: だんち | 2006年9月17日 (日) 03:23

だんちさん、こんばんは。
コメントを頂きありがとうございます。
そして評価をいただいたこともとても嬉しく思います。
いきなり第24話を見たのでこの作品のキャラたちの人間関係や
これまでのいきさつなど、まったく知らずに感想など書いて
しまいました。

う~ん、残りあと2回なんですか・・・。残念です。
もう少し早く見ることができていたらもっと感情移入できたし
さらに深く考えた感想文を書くことができたのにと、ちょっと
後悔しています。
でも、だんちさんがおっしゃるように残り2回であっても
作品の視聴体験を共有したいですね。
今夜の放送もしっかりと録画しておきます。

投稿: フレア | 2006年9月17日 (日) 21:39

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