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2007年3月17日 (土)

「ロケットガール」第4話を見た。

 こんにちは、だんちです。WOWOWノンスクランブル放送にて「ロケットガール」第4話を見ましたので、感想を書きたいと思います。
 原作は未読。アニメーション作品として楽しみつつ、中瀬理香さんのシリーズ構成作品として、物語構成の技術について学んでいく視点で視聴しています。

 前回、前向きにやる気になったゆかりが、根本的な問題に直面していくお話でしたね。
 自分が乗るロケットのことを何も知らない、ということ。
 そして、そのことを知ろうとする時に、大人達が誰も真正面から自分に向き合ってくれない、ということ。
 大人側も大人側で、なぜゆかりが怒るのかが分からない。
 その様子は、とても大人と子供の関係を象徴しているものに見えました。

 やはり、そこには大人側の問題が非常に大きなものとしてあるように思えます。
 専門的な議論やら、目的に向かっての探求などはできたとしても、「人に向き合う」ということがとにかくできない。ましてや相手が子供だったりすると、もうどうしていいのか全く分からないわけですね。
 那須田と木下がゆかりのハンストを受けて「まずいぞ。体重が減られると…」となるところなど、あまりにも分かっていなくって笑ってしまうわけですが。でも、笑い事でないくらいのリアリティがあるよな、と感じます。

 話を聞いてもらえない。
 誰も自分に分かるように説明してくれない。

 それこそが重要な問題で、根本的な問題なんですよね。
 その問題がはっきりと浮き彫りになる今回、ゆかりが水着を着ていて、作業員が鼻の下を伸ばしたりすることも描写として面白いな、と感じられます。

 女の子として、可愛いと見られたり欲情されたりはする。
 でも、メンバーとして一人前には扱われず、あくまでも「駒」とか「部品」扱い。

 求められているものは、言ってみれば肉体のみ。
 「体重が減られると困る」という那須田の発言は思いっきり本音ですよね。
 そりゃ、ゆかり怒るよ。
 心を持った人間としては完全無視なわけだから。

 物語の構成として、前回までに相当の苦労をしながら詰め込んできたことで、今回明確にそして無理なく、おそらくはこのアニメーションシリーズの根幹となるテーマに踏み込んできたように思います。

 子供を利用しようとする大人。
 大人に人として扱われることを求める子供。

 そこにある乖離は、非常に現実的で深刻なものがあるように思えます。
 子供側のゆかりは明確に答えを出しているんですよね。ちゃんと説明して、分かるように話して、と。
 だけど、大人側は全然それに気付かないし、分からない。
 で。ゆかりがハンストするようになって、やっと説明をしようとする。だけど、それじゃ遅いわけですよ。この段階のゆかりは「説明されること」を求めているわけではないわけですから。でも、大人側はやっぱりどうしたらいいのか分からない。そもそも自分達の態度に問題があったことを全く認識できていないのでしょうね。
 ロケットを打ち上げようっていう頭のよろしい大人達が雁首そろえてあのザマっていうのが、とても滑稽で。でも、そこには笑い事ではない真実味がある。
 結局、子供は部屋に篭るしかないわけですからね。

 そこに現れるゆかりの母親。
 ゆかりにとっては、自分にちゃんと向き合ってくれない象徴的な大人の一人の登場なわけですね。
 母親がいて、父親がいて、そして子供を利用する大人がいる。
 大人側の役者勢ぞろいでございますね。
 こりゃ、ますますゆかりのストレスは溜まることでしょう。

 でも、80年代のドラマみたいに「大人対子供」になるわけじゃないし、そんなものを描こうとしているわけではないこの作品。
 大人と子供が今後どう向き合っていくのか。
 シンプルで深刻なテーマに触れていくわけですから、描写することはなかなかに難しいとは思いますが、同時にやりがいもあるでしょうね。

 さて。
 構成としては、3話までである程度情報を詰め込んだことで、この4話からドラマ部分をじっくり描けるようになってくるわけですが。描こうとしているものがシンプルである分、構成もシンプルになっていくのではないか、と思います。
 その分、気をつけなければならないのが、前回も述べたディテールのところ、ということになるのでしょうね。
 今回のゆかりと大人達のすれ違いの描写は非常に上手かったと思いますし、やはりそこを上手く描けないとどうしようもないわけですからね。
 ゆかりが涙を溜めるところとか、良かったですね。
 それと、そんなゆかりをまったく見ていないで「体重が減られると…」となっている那須田達の描写も。

 子供をただ我侭に描くわけではなく、大人をただ醜悪に描くわけではなく。その本質を丁寧に描写していく。やはり、キャラクター描写、重要ですよね。
 基本構成を固めて、キャラクター描写を綿密にする。
 その基礎力の高さというものに、やはり毎回感銘を受けること大であります。

 この「基礎力」は、物語を構成したり、尺の中でのキャラクターの出し入れであったり、というところで落ち着いて見せてくれるところで窺えるわけですが、同時に「観察力」というところにも表れているなぁと感じます。

 …ふむ!
 ちょっと、いいキーワードに辿り着いた気がします。
 物語だったり絵だったりを表現する時、また演技というものを構築する時に求められる基礎力として、「観察」というのは重要なものだと思えます。
 以前読んだWEBアニメスタイルの湖川友謙さんへのインタビューで、氏が「デッサンと言っても、要は物の見方なんですよ…本格的なデッサンは、ほとんどやった事がないです…画が上手くなるための勉強は、「目」なんですよ。判断力ですから…(テーマに関わるところを抜粋)」と仰っていて、「はぁ…そういうものかぁ」とか思っていたのですが、今になると改めて「なるほどそうだよなぁ」と感じます。
 氏の発言は画に関してのことなわけですが、これは物語作りやキャラクターのディテールに関しても全く同じことが言えるのだと思います。

 何を見て、何を感じ、何を観察するのか。
 この「ロケットガール」の場合、仕事に熱中している大人はどんな感じなのか、親に放っておかれている子供はどんな様子なのか。
 それを、日頃から様々な人達を見て観察して判断する。
 その観察力がキャラクター描写に厚みを持たせているのでしょうね。
 台詞の選び方、キャラクターのリアクション、表情のつけ方…そういったところに丁寧さを感じるのは、そもそもの観察が丁寧だからなのでしょう。
 そうなってくると、面白い物語を作るために必要な基礎は「どのようにして日々を過ごすのか」のところに集約されてくる、ということになるのかもしれませんね。

 自分のことで言うと、「物語を作るためには知識がなければ」とか思って一生懸命いろいろな本や雑誌やらを読み漁っていた頃は、イマイチ物語を作れなかったように思います。それはそれで無駄じゃなかったんだろうけど、問題は「知識」ではなく「観察」だ、というところだったのに、若い頃はそれに気付けなかったんですね。
 人生経験を経てある程度の観察眼が自分に備わってきてから、物語を作ることがスムーズになってきたように思います。でも、それを意識して推し進めていくならば、もっとはっきりと物語作りの基礎ができてくるのかもしれない。
 観察…。
 物語を作る人はメモ魔だったりすることが多いのですが、やはりメモ重要ですね。
 僕も割とメモを取る人間ですが、もっと「観察」「メモ」という部分を意識して日々を過ごすべきなのでしょう。

 監督の青山氏、シリーズ構成の中瀬氏の観察眼というものに、非常に教えられます。
 そして、そもそもの原作の野尻氏の観察眼というものもまた、非常に優れたものなのでしょうね。

 そういった観察眼が今後の物語にどのように活かされていくのか。とても楽しみです。
 「観察」というテーマ…。
 物語を作る者にとって最重要といっていい基礎ですね。
 いい勉強をさせていただきました。
 今後も「ロケットガール」を楽しく視聴しつつ、沢山学ばせていただきたいと思います。

 更なる学習機会が与えられることを期待しつつ、「ロケットガール」第4話の感想を終わります。
 またです!!

 参照:「ロケットガール」第1話を見た。 「ロケットガール」第2話を見た。 「ロケットガール」第3話を見た。
    :「なぜアニメの感想を書くのか。どういったスタンスで書くのか。」
    :「物語り人(ものがたりびと)」であること。…学習機会レポート2
    :「物語作りの基礎。普遍的土台と誇張表現の調和により生まれる適度な感情移入…学習機会レポート」

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受信: 2007年3月17日 (土) 18:25

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