« 古泉VSキョンバトル漫画。「虹」26~28ページ。 | トップページ | 涼宮ハルヒ二次創作小説「デパートを出よう!」が本になります。表紙描きました。 »

2008年3月 2日 (日)

いまおかしんじ監督作品「たそがれ」を観てきた。

 こんばんは、だんちです。
 先日2月29日、うああ庵の小柴犬さんに誘われて、ポレポレ東中野という映画館にいまおかしんじ監督作品「たそがれ」を観てきました。そもそもmaepyさんが小柴犬さんをお誘いしたとのことで、そこに混ぜていただき、三人で楽しく観賞してまいりました。

 大変面白かったですし、非常に勉強になったので感想を書きたいと思います。

**********

 この作品。
 65歳の主人公とヒロインのお話で、老人の恋物語です。
 そして、セックスシーンもある、という。チャレンジ精神とメッセージ性のある意欲作なわけですが、特に素晴らしいのが「娯楽作品」に仕上げていることだと感じます。

 表現方法の自由度を追求し、観客に問いかけるメッセージを明確に語り、しかも、面白いものにする。

 これらが、一つの作品の中にしっかり共存していることが本当に素晴らしい。

 もちろん、映画という作品の性質からいったら、その分犠牲になっている部分もあって。
 スクリーン映えする綺麗な画とか、臨場感溢れる音響とか、そういうのはないんですね。台詞はアフレコで画面と微妙に合っていなかったりもして、そういう意味では臨場感はかなり犠牲になっています。
 では、なぜそれをするのか?

 ストーリーの面白さをはっきりと伝えるため。
 ストーリーにあるメッセージをこぼさず伝えるため。

 なのだと思います。
 そこに、狙いもあるのでしょうね。「老人問題」というテーマを恭しく扱うことで映画そのものを犠牲にするのではなく、「直面している問題を娯楽として昇華する」ことによって、「問題」を観賞者にとって、より身近に寄り添わせることができる。という。

 非常に、ロジカルな作りだと感じますし、そのロジックは人を楽しませることや作品をより分かってもらうために発揮されていることが、素晴らしいと感じるんですね。
 エゴがない、というか。ロジカルなんだけど、すごく監督の人柄が出ている、というか。

 だからこそ、なのか。女優さんの濡れ場の演技がすごくいいんですよね。

 コミカルな作風であることで、いくつかある濡れ場は、エロティックというよりは生活感のある感じのものが多くて、「そうそう。日常生活の中でのセックスってこうだよね」というものになっていて。それは、女優さんが作品を非常によく分かっているからできる演技なんだろうな、と感じました。
 そういうところも、監督のロジカルなところと人柄の賜物なのかな、と思うんですね。

 そうそう。
 ロジカル、ということでいうと。映像の繋ぎ方、映像によるストーリーラインの展開のさせ方に、「絵コンテ」があるのではないか、という印象もありました。
 いまおかしんじ監督がどういったフィルム作りをされている方なのかは、まったく知らないのですけれども、作品を見た印象としては、コンテワークによる明確で無駄のないストーリーラインの構築、というものを感じたんですね。
 フィルムの時間は64分ということで、映画としては短いのだと思いますが、情報量はけっこうあるように感じます。その情報量をリズムよく繋いで見せてくれる。場面展開もテンポがいいし。
 こういった映像のリズム感、画面情報の見せるテンポに、非常に親近感を覚えるんですね。
 アフレコを使っていることもあって、普段楽しんでいるアニメーション作品と、テンポ、リズムが近いように感じました。
 そういう意味では、アニメ好きの人にも非常にとっつきやすい作品かもしれません。

 絵コンテがあるのかどうか、は分からないことですが、とにかく、観る側のためにロジカルに作り上げられた作品であることで、作り手の人柄と語りかけてくるものとを感じる、非常に暖かい作品だと思います。

 ところで。
 僕が見た回では、監督の挨拶もあったのですが、「こんな地味な映画を観て下さってありがとうございます」という言葉があって、「そうだよなぁ。そういうものになるよなぁ」という風に思ったりもしました。

 僕も、漫画を描いていて、テーマの選び方やメッセージの浮き彫り方に気をつけるところがあるのですが、それによって作品のテイストが地味になることがあるんですね。
 伝えたいことを、受け取り手に語りかけるような物語を作っていくと、どうしても地味になる。
 そこは、自覚するところでもあったので、監督の「地味な映画」という自己評価に非常に親近感を覚えましたし、同時に勉強になる、とも思いました。

 面白いし非常に伝わる作品。だけど、地味。

 というものになる方法論があるのであれば、派手さやキャッチーさはまったく別のところに方法論がある、ということですね。
 それは、良し悪しではなく、取捨選択、ということでしょう。
 その観点では、「たそがれ」は監督の自覚通りで、面白くて伝わるけど地味になる方法論を取っている、ということなのだと思います。

 「老人の恋愛」という、ある意味極端なテーマを扱っている作品を楽しむことで、一人の作り手としてどこか吹っ切れるところもありました。
 こういう娯楽が成り立つ。ありうる。
 というところから、自分が何かを表現していく時の自由度が上がる感じがする、といいますか。
 「なんとなく地味になっちゃう」とか「とりあえず派手にしたい」とか、漠然と作るのではなく、取捨選択する。ということですね。
 「自分が何をしているのかを把握していることによって、表現はもっと自由になる」という感じでしょうか。
 無自覚だと、煮詰まるし、作品そのものが犠牲になっちゃうこともありますし。
 そんなわけで、「たそがれ」を観て帰って来てから、それまで止まっていた作品を改めて描くモチベーションが上がったりして、コツコツ描き進めていたりします。

 すっかり自分の話になってしまった。

 とにかく、僕にとって、とても意味のある観賞体験になったと思います。
 作品の中で主人公の鮒吉が年齢のことや世間体のことなどをまとめて乗り越えようと思いの丈をぶちまけるシーンがあるのですが、老人であっても心の自由を叫ぶ主人公に、多いに影響を受けるところがあったのでしょう。

 僕はまだ老人ではないけども。
 でも、自分を縛り付けている形の見えないものに抗うことは、映画の主人公に影響を受けてヒロイズムにちょいと酔うことによってできるのかもしれない。

 そして、そのことは僕だけでなく、多くの人にもあることだと思います。

 僕が観た回は、若い人もけっこう観に来ていました。
 「たそがれ」の持つメッセージの普遍性が、多くの人の背中を押すものになって欲しいと心から念願します。

 とても楽しい、良い作品でした!
 上映は今月7日までのようですね。今は11:00からの上映だけのようですが、興味のある方は是非観に行ってみて下さい。

 
 
 
 最後にネタバレ込みの感想を。

 
 
 いやもう。
 とにかく、作品全体が優しさでいっぱいなのがたまんねっすよ。

 孫がね!孫いい子だ!!
 子供ということもあって、演技自体上手いこたないんだけど。でも、それが逆に非常に良かった!
 じいちゃんに対して本当に優しく接してるんだなぁって。
 おばあちゃんのお見舞いにも行っていたし、本当に優しい子として存在していて。
 じいちゃんが和子さんと結局上手くいかなかったことで落ち込んでいるのを、ちゃんと感じ取るし、励ますためにスカート捲りをしてあげる。
 それはやっぱり、じいちゃんがどういう人かちゃんと分かってるからなんでしょうね。

 じいちゃんの鮒吉は、ガンで入院中の奥さんがいるのに、スナックのママとエッチしたりしてるのですが、ママが「入れてぇ」ってせがんできても電気マッサージ器でイカせたりして、入れないんですよね。
 それは話の序盤の方なので、「鮒吉、年寄りだし勃たないのかな?」と思わせるところで。

 ところが、奥さんが亡くなって、中学時代の想い人和子さんとエッチする時には、実は巨根でばっちり勃起することが明らかになる。

 で、和子さんとエッチした後に「死ぬまで一緒に生きよう!」と言うわけですが、これはエッチする前もエッチしている最中も鮒吉が思っていたことなんでしょうね。

 つまり、スカート捲りとスナックのママとのエッチは彼にとっては近いものがあって、遊びは遊び、本気は本気、という彼なりのルールがしっかりあったのでしょう。

 彼が自らの巨根を女に入れる時は、本気の時。
 だから、和子さんが指摘した通り、鮒吉は奥さんに愛されていたし、鮒吉も奥さんのことを本気で愛していた。
 奥さんが亡くなって、その時点では自分を相手にしてくれる女性がスナックのママだけになってしまったタイミングでママは若い男に寝取られてしまって。いよいよ孤独になった時に、和子とまた会って。亡くなった奥さん以外で本気で愛する女性を、彼は見つけるんですね。

 そういったエピソードの流れに、鮒吉と奥さんとの愛情やら優しさやらがちゃんと見えて、とてもいいんですね。
 鮒吉はいたずら好きのエロじじいだけど、ちゃんと愛することを知っている、っていう。

 だから、その本気の愛情を傾けた和子と別れた鮒吉に対して、孫が優しさを向けてくるんだな、と思うんです。
 孫は、鮒吉がどういう人か、ちゃんと知っている。
 おばあちゃんを本気で愛していたじいちゃんだから、別れた人のことも本気で愛したんだろう、っていうことを、彼なりに察したのでしょうね。

 まぁ、子供でもそこはやはり男。
 本気の愛と遊びは違うんだぜ、なんてなことを、子供ながらにどこか分かっていてじいちゃんに共感していたのかもしれないっすね。
 そういう意味では、「いくつになっても男と女」という作品の謳い文句は、実は孫にも当てはまるという絶妙さでもあるのでしょう。

 鮒吉は、娘からはガミガミ叱られてはいるけど、孫からも友人達からも愛される人物で。
 それは、自分が人を本気で愛することを知っているからこそ、だと感じます。

 だからやっぱり。
 鮒吉は、「映画ヒーロー」たりえるんだろうな、と思います。

 スカート捲りはしないけど。
 鮒吉の本気の愛を知っている男のヒロイズム、影響を受けたりしたいものです。

 
 以上で、ネタバレも含めた「たそがれ」の感想を終わります。
 またもや長文になってしまいましたが、それだけ楽しい観賞体験だったということでご容赦をば。

 これからも、楽しく、そして影響を受け、勉強になる、そんな作品体験を沢山していきたいものでございます。

 誘っていただいて、貴重な作品体験の機会を与えて下さった小柴犬さん、maepyさん、ありがとうございました!

 ではでは、またです!

|

« 古泉VSキョンバトル漫画。「虹」26~28ページ。 | トップページ | 涼宮ハルヒ二次創作小説「デパートを出よう!」が本になります。表紙描きました。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/68871/40341887

この記事へのトラックバック一覧です: いまおかしんじ監督作品「たそがれ」を観てきた。:

« 古泉VSキョンバトル漫画。「虹」26~28ページ。 | トップページ | 涼宮ハルヒ二次創作小説「デパートを出よう!」が本になります。表紙描きました。 »